第十三段武蔵鐙
  
…泉州本

定家本 第十三段   真名本 第段   通具本 第段
阿波文庫 第十三段   為氏本・一誠堂 第段   塗籠本 第段
泉州本 第段   為氏本・大島 第段   為家本・参考 第段
第段   為相本・天理 第段   小式部内侍本 第段

 むかしむさしなるおとこ、京なる女のもとに、「きこゆれば、はづかし。きこゑねば、くるし」とかきて、うはがきに「むさしあぶみ」とのみかきて、をこせてのち、おともせずなりにければ、京より女、
 むさしあぶみをさすがにかけておもふには
  とはぬもつらしとふもうるさし

とあるをみ見てなん、たがたき心ちしける。
 とへばふとはねばうらむゝさしあぶみ
  かゝるおりにや人はしぬらん


武蔵鐙をサスガに掛けて止めるように、流石にあなたを思っている私には
 なぜお便りを下さらないのと責めるのも辛いし、でも便りを下さるのも煩わしいし

武蔵鐙が掛かるように便りを出せば何故かと問い詰めるし、便りを出さなければ怨まれる
 こんな時にこそ苦しみの果てに人は死んでしまうのだろうか




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