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第百九段(藤原の敏行)
…泉州本
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定家本 |
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第百七段 |
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真名本 |
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第段 |
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通具本 |
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第段 |
阿波文庫本 |
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第百三段 |
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為氏本・一誠堂 |
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第段 |
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塗籠本 |
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第段 |
泉州本 |
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第段 |
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為氏本・大島 |
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第段 |
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為家本・参考 |
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第段 |
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第段 |
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為相本・天理 |
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第段 |
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小式部内侍本 |
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第段 |
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- むかし、あてなるおとこありけり。そのおとこのもとなりける人を、内記にありける藤原のとしゆきといふ人よばひけり。されどまだわかければ、ふみもをさをさしからず、ことばもいひしらずは、いはんや哥はよまざりければ、かのあれじなるひと、あむをかきてかゝせてやりけり。めでまどひ けり。さておとこ よめる、
- つれづれのながめにまさるなみだかな
袖のみひぢてあふよしもなし
- かへし、れいのおとこ、女にかはりて、
- あさみこそ袖はひづらめなみだ川
みさえながるときかばたのまむ
- といへりければ、おとこいといたうめでて、いまゝでまきてふばこに入れてありとなむいふなる。 おとこふみおこせたり。えてのちの事なり 。「あめのふりぬべきになむみわづらひ侍 。みさいはいあらば、このあめはふらじ」といへりければ、れいのおとこ、女にかはりてよみてやる。
かずかずにおもひおもはずとひがたみ
身をしるあめはふりぞまされる
とよみてやれりければ、みのもかさもとりあへで、しとゞにぬれてまどひきにけり。
しんみりと物思いにふけっているので、涙が水かさの増した川のように流れ
袖が濡れるだけで、あなたにお逢いする術もありません
川が浅いからこそ、袖は濡れるのでしょう
あなたの涙の川が深くなって、体まで流れるとお聞きしたならば、あなたを頼りにいたしましょう
あれこれと私を思って下さるのか、思って下さらないのか
本心を聞きかねていましたので、私の悲しい身のほどを知る涙の雨は
語 句
現代語訳