第二十段
(
楓のもみぢ
)
・・・阿波国文庫本
〜
定家本
…
第二十段
むかし、をとこ、やまとにあるをんなをよばひてあひにけり。さて、ほどへて、みやずかへするひとなりければ、かへりくるみちに、やよひばかりに、かへでもみぢの、いとおもしろきを
みて
、をんなのもとに、みちよりいひやる。
きみがため たおれるえだははるながら
かくこそ秋のもみぢしにけれ
とてやりたりければ、かへりごとは、きやうにきてなん、もてきたりける。
いつのまにうつろふいろのつきぬらん
きみがさとにははるなかる
べし
あなたのために折ったこの枝は、まだ春だというのに
こんなにも秋の紅葉のように、きれいに染まっているよ
いつの間に、移り変わる色が、ついてしまったのかしら
あなたがのいらっしゃる所には、春がなくて秋ならぬ、春がなくて秋ならぬ
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