第十九段（天雲のよそ）

　・・・阿波国文庫本

～

定家本

…

　むかし、をとこ、みやづかへしける女のごちなりけるひとをあひしりたりけり。ほどもなくかれにけり。おなじところなれば、をんなのめにはみゆるものから、をとこは｢あるものか」とおぼえず。をんな、
　　あまぐものよそにもひとのなりゆくか
　　　さすがにめにはみゆるものから

とよめりければ、をとこ、かへし、
　　あまぐものよそにのみしてふる事は
　　　わがゐるやまのかぜはやみなり

とよめりけるは、又をとこあまたもたりけるひとになむいありける。

天雲のように、あなたは遥か遠くのものになって行ってしまうのね

　　　そうはいうものの、私の目にはあなたのお姿が見えているのですよ　

天雲が、あなたから遥か遠くにしかいないのは　　

　　　　　

　　　私がいつもいる山の、風が激しくて近づけないからです

語　句

現代語訳

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