第 42 段
昔、男が色好みと知りながらも、女と逢うようになった。しかし男はその女を憎いとは思わなかった。何度も通ったけれどまだ不安で、とはいってもとても通わずにはいられなかった。やはり通わざるを得ないほどの仲だったので、二、三日ほど都合が悪く行けなかったとき、このように詠んでおくった。
出でて来しあとだに未だかはらじを
誰が通ひ路と今はなるらむ
私があなたの家からとぼとぼと来た帰り道には、足跡だってまだそのままあるだろうに
一体どの男の通い道と、今はなっているのだろう
女の気持ちが疑わしかったから、このように詠んだのだった。
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