第 103 段


 昔、男がいたの。とても真面目で実直で、浮気をしようというような心はなかったわ。深草の帝にお仕えしていた。でも、心のバランスがくずれたのかしら、親王たちが使っておられた人と深い関係になってしまったのよ。そうして、
 
 寝ぬる夜の夢をはかなみまどろめば
   いやはかなにもなりまさるかな

      供寝した夜の夢が、あまりにもあっけないので、もっとハッキリと見たいと、まどろんでみたら
        いよいよその夢は、あっけないものになってしまいました

と詠んで贈ったんだって。そんな歌本当に見苦しいわ。




原 文         解 説


  定家本 狩使本   在原業平 藤原高子 伊勢斎宮 東下り
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