第百十一段
(
まだ見ぬ人
)
・・・阿波国文庫本
〜
定家本
…
第百十一段
むかし、をとこ、
なくなりにける女を
とぶらふやうにて、いひやりける。
いにしへは ありもやしけむ いまぞしる
まだみぬ人を こふるものとは
かへし、
をんな、
したひもの しるしとするも とけなくに
かたるがごとは こひずぞ
あらなん
昔はこんなことがあったでしょうが、今はじめて知りました
まだ見たこともない人を、恋するものだと
ひとりでに解けるのが下紐の恋の証拠だといいますが、その下紐も解けませんから、
あれこれおっしゃる程には、私を恋い慕って
いるわけないでしょうね
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