群論・伊勢物語 第84段

(在原業平要素_4)


 昔、男がいた。身分は低いけれど、母は内親王であった。その母は長岡という所に住んでおられた。子は京で帝にお仕えしていたので、母をお訪ねしようとしたけれど、度々お訪ねするというわけにはいかない。そのうえ、一人っ子でさえあったので、母はとてもお可愛がりになっていた。そうしているうちに、十二月の頃に、「至急」という事で、お手紙が届く。驚いて見てみると歌があった。

  年老いたならば

  どうしても避けられぬ別れがある

  ということですから

  ますますお目にかかりたいと思います

  愛しい我が子よ

その子は、はげしく泣いて詠んだ。

世の中に

  避けられない別れなんかないほうがいい

  千年も生きていて欲しいと

  長寿を祈る人の子のために

 




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