群論・伊勢物語 第6段

(二条后要素_4・最終段)


 昔、男がいた。とても手にとどかない女性を、何年も何年もよばいして求婚し続けて、ようやく盗み出してきて、大変暗い夜の中を逃げてきた。芥川という川の辺を女性を連れて行くと、草の上に乗っている露を見て、女性は「ねえ、あれは何かしら」と男に聞いたのだった。行き先迄は遠く、夜も更けてしまった。鬼の住む場所とも知らず、雷までもが激しく鳴り、雨もひどく降ったので、荒れ果てた蔵の奥にに女性を押し入れ、男は弓、矢入れを背負って、戸口に陣取った。早く夜が明けないものか、と思いながらいたのだが、蔵に押し入った鬼は、一口で女性を食べてしまった。「アー」と叫んだのだけれど、悲鳴は雷の大音響にかき消されて聞こえなかった。ようやく夜も明けて見てみると、連れてきた女性の影も形もなかった。男は地団駄を踏んで泣いたけれど後の祭りだった。

ねえ、あれは真珠かしら、何かしらと

  あの人が聞いたときに

  あれは露と答えて

  私も露のように消えてしまっていたら

  よかったのに


  群論・伊勢物語・・・終
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