第 九十三 段
(たかきいやしき)
むかし、男、身はいやしくて、いとになき人を思ひかけたりけり。すこし頼みぬべきさまにやありけむ、臥して思ひ、起きて思ひ、思ひわびてよめる。
あふなあふな思ひはすべしなぞへなく
高きいやしき苦しかりけり
むかしもかかることは、世のことわりにやありけむ。
身分の違いなんか考えずに、恋はするものだ
身分の高い者と低い者との恋は、こんなにも苦しいものなのだ
語
句
定家本
狩使本
在原業平
藤原高子
伊勢斎宮
東下り
次の段
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前の段
前段(九十二)
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