第十八 段  (白菊)


 むかし、なま心あるありけり。男ちかうありけり。女、歌よむ人なりければ、心みむとて、菊の花のうつろへる折りて、男のもとへやる。
 紅ににほふはいづら白雪の
  枝もとをゝに降るかとも見ゆ

男、知らずよみにける。
 紅ににほふがうへの白菊は
  折りける人の袖かとも見ゆ



紅色が美しいところとは一体どこなのかしら
 白雪が枝もたわわになるほどに、降っているのかとも見えますが
紅色に美しい上に真っ白な白菊は
  これを折って下さった美しい方の袖の色かとも見えますが



語 句


  定家本 狩使本   在原業平 藤原高子 伊勢斎宮 東下り
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現代語訳
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