第 百二十一 段
(梅壺)
むかし、男、梅壺より雨にぬれて人のまかりいづるをみて、
鴬の花を縫ふてふ笠もがな
ぬるめる人にきせてかへさむ
かへし、
鴬の花を縫ふてふ笠はいな
おもひをつけよ乾してかへさむ
鴬が梅の花を縫って作るという、花の笠があったなら
雨に濡れた様子のあなたに、それを着せてお返ししようかな
鴬が梅の花を縫って作るという、花の笠は要りません
あなたの思いの火を灯けて下さいな、それで私の衣を乾かして、
今度は私の火をお返ししましょう
語 句
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