第 百十四 段
(芹河に行幸)
むかし、仁和の帝、芹川に行幸し給ひける時、いまはさること似げなく思ひけれど、もとつきにける事なれば、大鷹の鷹飼にてさぶらはせ給ひける、摺狩衣の袂に、書きつける。
翁さび人な咎めそ狩衣
けふばかりとぞ鶴も鳴くなる
おほやけの御けしきあしかりけり。おのがよはひを思ひけれど、若からぬ人は聞きおひけりとや。
老人のような有様を、皆さんどうぞお咎め下さるな、この狩衣でお伴するのも
今日限りであるよと、今日一日の命の鶴も鳴いています
語 句
定家本
狩使本
在原業平
藤原高子
伊勢斎宮
東下り
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