第九十段（桜花）
　・・・阿波国文庫本
〜 定家本 … 第九十段
　むかし、つれなき人を｢いかで」とおもひわたりければ、あはれとや思ひけん、「さらばあすものごしにても」といへりけるを、かぎりなくうれしがる。またうやたがはしければ、おもしろかりけるさくらにつけて、
　　さくらばな けふこそかくも にほふとも
　　　あなたのみがた あすのよのこと
といふ。心ばへもあるべし。
　
　　　桜の花よ、今日こそは、こんなに美しく、咲き香っているけれど

　　　　　ああ、何とも頼りないことだよ、明日の夜のことが


語　句

現代語訳
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