第八十一段塩竈
 ・・・阿波国文庫本

定家本 第八十一段

 むかし、左の大まうちぎみ、六条のさとにいへまたなくつくてすみけり。神な月のつごもりきくの花うつろへるさかりに、みこたちおはしまさせてさけのみしあそびて、よあけゆくに、このとののおもしろきをほむるうたよむ。そこにありけるかたゐをきな、いたじきのしたにはひありきて、人にみなよませはてて
 しほがまに いつかきにけん あさなぎに
  つりするあまの こゝによらなん

よみけるは、みちのくににいきたりけるに、あやしくおもしろき所おほかりけり。わかみかど六十よ國のなかに、しほがまといふところに、にたるところなりけり。さればかのをきな、さらにこゝをめでて、「
しほがまにいつかきにけん」とよめりる
 

   塩釜に、いつの間に来てしまったのか

     朝凪の海で釣りをする海女は、この庭に寄ってほしいものです


語 句


現代語訳
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