第
五十九
段
(
東山
)
・・・阿波国文庫本
〜
定家本
…
第五十九段
むかし、をとこ、
みやこ
をいかゞおもひけん。「ひんがしにすまむ」とおもひいりて、
すみわびぬ いまはかぎりの やまざとに
みをかくすべき やどをもとめてん
かくて、ものいた
う
やみて、しにいたりければ、おもてにみづそゝきなどして、いきいでて、
わがうへに つゆぞおくなる あまのがは
とわたるふねの かひのしづくか
となんいひて、いきいでたりける。
京は住みにくくなってしまったよ、もうこれが最後と山里に
我が身を隠す、家を探そう
天の川が、私の上に露を置いたよ
川門を渡る、船の櫂の雫だろうか
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