第 十二 段武蔵野
 ・・・阿波国文庫本

定家本 第十二段

 むかし、をとこありけり。ひとのむすめをぬすみて、むさしのへゐてゆくほどに、ぬすびとなりければ、くにのかみにからめられにけり。をんなをばくさむらのなかにおきて、にげにけり。みちくるひと、「こののはぬすびとあり」とてひつけんとす。をんな、わびて、 
  むさしのはけふはなやききそわかくさの
  つまもこもれりわれもこもれり
とよみけるをきゝて、をんなをばとりて、ともにゐていにけり。

武蔵野は今日だけは、焼かないで下さいな                
              若草の中には、愛しい夫も隠れているのです、私も隠れているんです



語 句


現代語訳
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