第百十八段深草
 ・・・阿波国文庫本

定家本 第百三十二段
大島本 第百二十段

 むかし、をとこありけり。ふかくさにすみける女を、あきがたにや思ひけん、かゝるうたをよみけり。
  としをへて すみこしさとを いでていなば
   いとゞふかくさ のとやなりなん

おんな、返、
  のとならば うづらとなりて なきをらん
   かりにだにやは 人のこざらん

よみけるに、めでゝ「ゆかん」とおもふ心なくなりにけり。



   何年も一緒に、住んで来たこの深草の里を、私が出て行ったならば

     なお一層深い草の野と、なってしまうでしょう
  草深い野となってしまったならば、私は鶉となって鳴き続けましょう

     例えかりそめであっても、誰かが狩に来ることもあるでしょうからね


語 句


現代語訳
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