第27段(たらひの影)
  
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 昔、男が女の所に一夜だけ行って、再び行かなくなってしまったので、女の親は腹を立てて手を洗う場所に、ヌキスという竹簾を脇に置いたところ、タライの水に自分の影が映って見えたので、 

 わればかり物おもふ人はまたもあらじと
    おもへばみづのしたにもありけり

    私くらい、悲しい思いをしている人は、他にいないだろうと思っていたのに
     なんと水の下に、もう一人いたのでした

と詠んだのを、あの今まで通って来なかった男が、立ち聞きして詠んだ。
 
みなくちに我やみゆらんかはづさへ
   みづのしたにてもろこゑになく

     水口に私が見えるでしょうか、蛙でさえ
      水の下で声を合わせて、鳴くのですよ




原 文         解説

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