第100段ひをりの日
  
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 昔、右近の馬場の騎馬の試射のあった日に、向かい側に立ててあった車に、女の顔が、下簾からうっすらと見えたので、中将であった男が詠んで送った。

  見ずもあらず見もせぬ人の恋ひしくは
   あやなくけふやながめ暮さむ

        全く見ないのでもなく、はっきり見たのでもない人が恋しくて
          訳もわからずに今日は、物思いにふけながら一日を、過ごすのでしょうか

女の返歌。

  知る知らぬ何かあやなくわきていわむ
   思ひのみこそしるべなりけれ

      知っているとか知っていないとか、何の訳もなく、区別して言えるのでしょうか
        ただ恋しい思いだけが、恋の道標なのですよ

その後、この女が誰であるか知ってしまった。



原 文         解説

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