第　九十五　段　（彦星）

　むかし、二条の后に仕うまつる男ありけり。女の仕うまつるを、つねに見かはして、よばひわたりけり。「いかでものごしに対面して、おぼつかなく思ひつめたること、すこしはるかさむ」といひければ、女、いとしのびて、ものごしに、逢ひにけり。物語などして、男、
　　　彦星に恋はまさりぬ天の河
　　　　へだつる関をいまはやめてよ

この歌にめでて、あひにけり。
　彦星の苦しみよりも、私の恋の方がまさってしまった
　天の川のように二人を隔てる関を、今はもう取り払って下さい

　

語　句

　 定家本 狩使本 　 在原業平 藤原高子 伊勢斎宮 東下り
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現代語訳
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