第 73 段


 昔、そこにいるとは聞いているけれど、消息でさえ口に出して言えない高貴な女の身のまわりを恋しく思った。

 
 目には見て手にはとられぬ月のうちの
    桂の如き君にぞありける

       目には見えているけど、手に取ることのできない、月の中にあるという
         のような、あなたでありました



原 文         解 説


  定家本 狩使本   在原業平 藤原高子 伊勢斎宮 東下り
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異 本
  阿波国文庫本 泉州本 大島本 神宮文庫本 朱雀院塗篭本 為家本
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