第 64 段


 昔、男がこっそりと契ることもしなかったので、女がどこにいるのか、不審に思って詠んだ。
 
 吹く風にわが身をなさば玉すだれ
   ひまもとめつゝ入るべきものを

       吹く風に、もしも私を変えことができるなら
        玉すだれのすき間を探し出して、入ることができるのに

 女の返し歌。
  
とりとめぬ風にはありとも玉すだれ
   誰が許さばかひもとむべき

       手に捕らえられない、風であっても
        玉すだれのすき間を、一体誰の許しで、探し出せるのでしょうか



原 文         解 説


  定家本 狩使本   在原業平 藤原高子 伊勢斎宮 東下り
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