第 37 段


 昔、男が色好みの女に逢った。将来のことを気がかりに思ったのだろうか、次の歌を贈った。
  
我ならで下紐解くな朝顔の 
   夕影待たぬ花にはありとも

      私以外の人に、下紐を解かないで下さいよ、あなたが朝顔のように
        夕日を待たない、変わりやすい花であっても

女の返し歌。

  ふたりして結びし紐をひとりして
   あひ見るまでは解かじとぞ思ふ

      二人で一緒に結んだ紐ですから、私一人では、
        あなたとお逢いするまでは、決して解くつもりは、ないと思っています

 


原 文         解 説


  定家本 狩使本   在原業平 藤原高子 伊勢斎宮 東下り
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