異 2 段 【 B 】


  昔、女を盗んで行く道の途中に、水のある所があった。男は「飲まむや」と聞くと、女はコックリとうなずいた。茶碗などは持っていなかったので、手に結んですくって飲ませた。その後京に上ったおり、前の場所に帰って行く時に、あの水を飲んだ所で、
  
大原やせがゐの水を結びつつ
    あくやと問ひし人はいづらは

          大原の清和井の水を結んだ手で飲ませながら
             「もういいですか」とたずねたあの人は、今はどこに行ったのだろう

と詠んで、死んでしまったのでした。 ああ哀れ哀れ。

(阿波文庫本)




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原 文
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