第 115 段


 昔、奥州で、男と女が住んでいた。男は、「都に帰ろうと思う」と言う。この女はとても悲しくて、せめて送別の会だけでも開こうと思って、「おきのいて都島」という所で、男に別れの酒を飲ませて詠んだ。

 
 おきのゐて身を焼くよりも悲しきは
   都のしまべの別れなりけり

       真っ赤におこした炭火がくっついて、私の体を焼くよりも悲しいのは
         都島の水辺での別れなのです



原 文         解 説


  定家本 狩使本   在原業平 藤原高子 伊勢斎宮 東下り
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