第９３段（たかきいやしき）
　・・・阿波国文庫本
〜 定家本 … 第９３段

　昔、男が自分の身分は低かったが、似合わしくない高貴な身分の人を思ったのだった。その女に少しは望みをもってもよさそうな感じであったのだろうか、横になっては思い、寝ていても思い、思い悩んだ挙句の歌を詠んだ。
　　あふなあふな思ひはすべしなぞへなく
　　　高きいやしき苦しかりけり

　　　　　　　身分の違いなんか考えずに、恋はするものだ
　　　　　　　　　身分の高い者と低い者との恋は、こんなにも苦しいものなのだ

　昔もこのような身分違いの恋いに苦しむのはあったそうだ。世の道理であったのであろうか。


原　文　　　　　 　　　解　説

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