第87段おのがさまざま
 ・・・阿波国文庫本

定家本 第86段

 昔、とても若い男が、若い女会い愛しあうようになったのでございます。しかし各々が親の庇護のもとにあったので、親に遠慮して交際が中途半端で終わってしまった。何年かしてから女の方から、「やっぱりあなたへの愛情を貫きます」と求愛したので、男は歌を詠んでおくった。その歌は、
 
今までに忘れぬ人は世にあらじ
   おのがさまざま年の経ぬれば

     今の今まで、昔のことを忘れないでいる人は、この世にはいないでしょうね
      お互いに、それぞれに過ごして、もう何年も経ってしまいましたからね

    
 男女、全く同じ所に宮仕えしていたのでこうして出仕したのだった。 




原 文         解 説


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