第82段(雨の音)
 ・・・阿波国文庫本

異段 異一段【A

  雨が一日中激しく降り続き、次の朝もまだひどく降っているとき、ある人のもとに歌を贈った。
 
  降り暮らし暮らしつる雨の音をつれ
    亡き人の心ともがな

        降りつづけ降る雨の音のように、 訪れつづけるのが、
          情けのない冷たいあなたの心であってくれればいいのですが

返しの歌、
  
ややもせば風に従ふ雨の音を
   
絶えぬ心にかけずもあらなむ

       どうかすると、風によって雨の音は変わりますが
         その雨の音を、たえず変わらない私の心に、引きかけないでほしいのです




原 文

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