第124段(清和井の水)
 ・・・阿波国文庫本

異本章段 異2段 【B】

  昔、女を盗んで行く道の途中に、水のある所があった。男は「飲まむや」と聞くと、女はコックリとうなずいた。茶碗などは持っていなかったので、手に結んですくって飲ませた。その後京に上ったおり、前の場所に帰って行く時に、あの水を飲んだ所で、
  
大原やせがゐの水を結びつつ
    あくやと問ひし人はいづらは

          大原の清和井の水を結んだ手で飲ませながら
             「もういいですか」とたずねたあの人は、今はどこに行ったのだろう

と詠んで、死んでしまったのでした。 ああ哀れ哀れ。


注:女の前に「男」が抜けている。大原や・・・の歌は女の歌であったことが、小式部内侍本や泉州本に、「おとこなくなりににければ」と男が死んだことになっていることからわかる。この物語が、業平の物語に編入されることで、肝心の男が死んでしまっては後が続かないために男の死の箇所を削除して女が死んだことに変えたのであろう。


原 文
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