第 99 段


解説

「 大和物語 166段
 在中将、物見にいでて女のよしある車のもとに立ちぬ。下簾の間より、この女の顔いとよく見てけり。ものなどいひかはしけり。これもかれも帰りて、朝によもてやりける。
 見ずもあらず見もせぬ人の恋ひしくは
  あやなく今日やながめ暮さむ

とあれば、女、返し、
 見も見ずもたれと知りてか恋ひらるる
  おぼつかなみの今日のながめや

とぞいへるける。これらは物語にて世にあることどもなり。」

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