第 69 段


解説

  この69段は、小式部内侍本では初段にあり、『伊勢物語』の名の由来となっている。
  しかしこれは単なる恋物語ではなく、大事件でもあったのだ。恋の相手は天皇の娘である。当時の政治状況では、例えば『平家物語』の安徳天皇入水のカラクリを記述したような、大変不都合な事実がしかも初っ端に書き始めてあったのであろう。後世に編纂を行い、今のような文章になったことは充分に考えられる。
  密通の相手は文徳天皇の皇女・恬子(やすこ)内親王で、かつ惟喬親王の妹であった。彼女の母・紀静子の兄・紀有常の娘は、業平の妻である。身内であるから、「普段より、よくおもてなしなさい」と、母が手紙を送ったのを、斎宮・恬子はもてなしの意味を勘違いしたのか甘い甘い一夜を過ごしたのであった。月光の中に現れた斎宮と、言葉を交わす間もなく、2時間半の夢のような時間が過ぎたのである。「夢か現か」のイメージで次の二段に続く。
  この密通によって恬子内親王が高階師尚を産んだという事実を、業平は知らなかったようである。

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