第 23 段


解説


 幼なじみの同士が結婚して、幸せな生活を送っていたのだが、女が経済的に没落したために、男は生活に困り、よその金持ち女と仲良くなるのである。しかし、成金女のガサツさよりも、貧乏女の品格の素晴らしさに気づき、貧しいながらも楽しい我が家を選んだのである。母系社会の様子がよくわかる段である。現代ならば、全く逆の社会現象が見られるであろう。
 類似話が、次の大和物語・一四九段にある。
「 大和物語 一四九段
 むかし、大和の国、葛城の郡に住む男女ありけり。この女、顔かたちいと清らなり。年ごろ思ひかはして住むに、この女、いとわろくなりにければ、思ひわづらひて、かぎりなく思ひながら妻をまうけてけり。この女の妻は、富みたる女になむありける。ことに思はねど、いけばいみじういたはり、身の装束もいと清らにせさせけり。かくにぎははし所にならひて、来たれば、この女、いとわろげにてゐて、かくほかにありけど、さらにねたげにも見えずなどあれば、いとあはれと思ひけり。心地にはかぎりなくねたく心憂く思ふを、しのぶるになむありける。とどまりなむと思ふ夜も、なほ「いね」といひければ、わがかく歩きするをねたまで、ことわざするにやあらむ。さるわざせずは、恨むることもありなむなど、心のうちに思ひけり。さて、いでていくと見えて、前栽の中にかくれて、男や来ると、見れば、はしにいでゐて月のいといみじうおもしろきに、かしらいけづりなどしてをり。夜更くるまで寝ず、いといたううち嘆きてながれければ、「人待つなめり」と見るに、使ふ人の前なりけるにいひける。
 風吹けば沖つしら浪たつた山
  夜半にや君がひとりこゆらむ
とよみければ、わがうへを思ふなりけりと思ふに、いと悲しうなりぬ。この家の妻は、龍田山を越えていく道になむありける。かくてなほ見をりければ、この女、うち泣きてふして、金まりに水を入れて、胸になむすゑたりける。あやし、いかにするかあらむとて、なほ見る。さればこの水、熱湯にたぎぬれば、湯ふてつ。また水を入る。見るにいと悲しくて、走りいでて、「いかなる心地したまへば、かくはしたまふぞ」といひて、つとゐにけり。かくて月日おほく経て思ひやるやう、つれなき顔なれど、女の思ふこと、いといみじきことなりれるを、かくいかぬをいかに思ふらむと思ひいでて、ありし女のがりいきたりけり。久しく行かざりければ、つつましく立てりける。さてかいまめば、われにはよくて見えしかど、いとあやしきさまなる衣を着て、大櫛を面櫛にさしかけてをり、手づから飯もりをりける。いといみじと思ひて、来にけるままに、いかずになりにけり。この男はおほきみなりけり。


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